羊の木を見てきました

錦戸亮さん主演の映画『羊の木』行ってきました。錦戸さんの演技を堪能できとても良かったです。

とても良かったのですが、色々と刺さりまくってしんどかった…。

忘れないうちに感想を。ぼちぼちネタバレあります。見られた方、わかっていただけたら嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画全体の最初の印象としては、『手垢まみれの硝子越しに見る、日常にこびり付いた狂気』という感じ。…いきなり抽象的すぎる感想。

とにかく序盤のBGMがなんともいえずおどろおどろしくて重くて、振り払っても振り払っても身体に絡みついてくる違和感がたまりません。

なぜ手垢まみれの硝子越しなんてイメージがわいたのか全くわからないのですが、すとんとそういう印象を感じました。

すりガラスではなくて、古いアパートの窓というか、どんより濁っていて少し歪んで見える色味というか。

きっとあの町に吹く風の色なんだろうな。

 

みんな異なる狂気を抱いていて、どう向き合ってどう立ち向かうのか。

そして赦しを得るということ。

罪と狂気からの赦し。

人を愛するということ、人から愛されるということ。

誰もが形は違えど恐怖と闘っていて、哀しみから逃れようとしていて、人から信じてもらいたい愛されたいと願っている。そんな中でどう生きるのか。

人と関わって、傷つけて傷つけられて、疑って信じて、どう生きていくのか。

 

…みたいなのがテーマってことでいいんですかね?

最初にも書きましたが、私は色々刺さってしんどかったです。

それぞれ役者さん方がとても良かったので、個々に感想を。 

 

 

まずは錦戸亮さん。

「人も良いし、魚も美味い。」同じ台詞ですが、この言い回しが徐々に変わっていくのが好きです。わかりやすく彼の戸惑いが滲んでくるのですが、回数を重ねるごとに蓄積していく違和感の出し方が凄い。良い。

あと、月末くんの歩き方がすっっっごくしっくりきました。あの町で生まれて育って生活してる感じが、歩き方から感じ取れるようで。決して錦戸亮の歩き方ではなくて、月末一という人間が垣間見えた気がします。

なんて、お前どこ目線やねんていう…。

語彙力3のアホになってしまう萌えポイントも多かったですね!

・ようこそペーパー持ってる時の(○´・ェ・`○)クーン って捨てられた仔犬感やばみ。ほんと月末くん終始この顔(´・ェ・`)

・刑務所までお迎えに行った時に名刺入れ出すとこもぐう萌えでしたし、払い落とされた名刺入れを追う視線とか、拾う仕草とか、いちいちツボ

・ベースひいてるのほんっっっともう(真顔)

・ベース背負ってチャリンコ乗ってる姿は高校生かと。たぶんずっとそうして生きてきたんだなって思わせてくれる佇まい。好き。

・魚うまいすよ!とか言うのにカレー食べちゃうあたりにどっくんみを感じましたwww

・玄関にあるお父さんの車いすを定位置に置き直すとことか、お祭りで叔母さんのお小言に口答えできないとことか、彼の暮らしぶりを感じ取れて好きでした。

・ヒゲ剃られてる場面で剃刀をガッ!と引きはがす腕の男らしさったら…もう…♡あれは月末くんの中の錦戸さんみを感じたなぁ。

・彼の部屋も、あの、実家の自分の部屋!って感じがよかったです。高校生あたりからあんまり変わってない感じというか。

・ギターひいてるのほんっっっっともう(またこれか)

・衝撃のラスト!ってわざわざ言われていたので、序盤であーたぶんこうなのかな?って思ったら当たってしまって(めちゃくちゃわかりやすかったですが)、それがちょっとだけ残念でした。宮腰さんがああなるとは思いませんでしたが。

 

 

北村一輝さん!

ただの顔の濃いおにーさんじゃないぞ!杉山が一見すると1番掴みどころのない飄々とした悪人という描かれ方でしたが、実は1番わかりやすいような。罪を罪と思わず、自分は狡賢いとわかっていて立ち回りのできる人???

あかん、全然わかってないw

彼の恐怖の対象は、退屈な生活?スリルの中でないと生きている実感が持てないのかなーと。

もうちょっと掘り下げて色々見たかったなぁ。

一匹狼ぶってますが、色んな人と(悪事を企てるためとはいえ)関わろうとしたり、なんだかんだと祭りに参加したり、実は寂しいだけだったのかもね。

それは死を持って解き放たれたわけですが。

あぁそうか。人と関わりたいという気持ちって最終的にたどり着くのは、殺されるってことなんだ。自分の人生が人の手によって終わる。これってつまり人が持ちうる限り最大の、人との関わり方なのか。

おーなんか納得できた。

 

 

優香ちゃーーん!

予想外に私の心に傷を残しまくったお人、太田さん。あ、私自身のリアル性癖の話が出ますので苦手な方はそっ閉じしてください。

好きだから、彼の言われるままに首を絞めた。好きだったから。そのうち自分も怖いのか気持ちいいのかわからなくなって…。

わかる。超わかる。彼の気持ちも彼女の恐怖もめっちゃわかる。私も彼と同じ性癖の人間でして。さすがに加虐趣味のない人にお願いすることはありませんが。

首を絞めるのが上手い人って血管を絞めるんですよ。気管は通ったままなので呼吸は出来る。息苦しくはないのに脳が酸欠になってどんどんヤバイ脳内麻薬的なものが出てくる。アドレナリンどっぱどぱだぜ!状態(わからない方は頭文字D見てください)

何より“死ぬかもしれない”という恐怖感。これがもう、一度経験してしまうとあかん。オススメしません。ほんとに。立ち直れなくなるし心身のダメージが半端ないから。何度このまま死にたいと思ったことか。

だから、太田さんの夫が羨ましいなと思ってしまいました。それと同時に、私はパートナーに太田さんのような思いをさせてしまう未来もあったのだと後悔しました。今となっては当時のパートナーと再び連絡を取ることはありませんが。

惚れたが負けとはよく言いますが、死んだ人間の勝ちなんだなってとんでもなく思った。

ああ私に刺さったこの感情をまったく書き表せない…。

もう人を愛してはいけないのですか?という悲痛な思いがこの作品の中で1番私に響きました。

彼女の中には消したくても消えない、人を殺める快感が残っていそうなところが良いですね。そういう妄想の余地があるお芝居って好きなんだよなぁ。

だからこそ月末父が倒れたとこの演出はゾクゾクしました。太田さんが心の奥底にしまい込んだ殺人鬼が出てくるかと思ってちょっとわくわくしてしまったw

あの時降り出した雨は、彼女の言っていた『もう刑務所には戻らない。好きな人のそばにいたい。』という気持ちだったのですかね。その気持ちが殺人鬼の炎を消したのかなーとか。

生きる事が、今度こそ誰かを心から愛しぬく事が、彼女を救うのでしょうか。救われてほしいなぁ。

あかんもう何書いてるんかわからへん。私に刺さったことが1ミリも伝えられへん。これ以上書いても伝えられないのでこんなもんで。

 

 

市川実日子さん!

最近でいえばシン・ゴジラの印象が強いんですが、栗本さんの感じた恐怖もよかった。彼女が罪の意識に苛まれている感じとか、羊の木の演出とか。ほかの方同様にもうちょっと掘り下げてほしかったけど、あれ以上栗本さんの説明があったらお話すすみませんからね…。

祭りの場面でお酒で福元さんが暴れるじゃないですか。あの場面、身内にアル中で暴れる人間がいたので勝手にバッシバシ刺さって勝手に死んでました。でも彼女の感じる恐怖は暴力をふるわれることではなくて、それに勝つだけのチカラが己の中に眠っている、それがいつ出てくるかわからなくて怖いということ。

海岸の清掃をしてる時の要領の悪そうな感じとか、子供たちと亀を埋めるとことか、アパートでの佇まいとか、あの人にしか出来ない空気だなぁと舌を巻きました。

最後の芽は、何の木の芽だったんでしょうか。

残された彼らの希望の芽だったらいいなぁとか。

…めちゃくちゃ平凡な感想wwwすみませんね、陳腐な言葉しか出てこなくて。

 

 

水澤紳吾さん。ほんと市川さんといい、その人にしか出せない味のある役者さんですよねぇ。

福元さんといえばやはり髭剃りの場面ですよね。あれ錦戸さんが番宣か何かで剃刀の歯は落としてあるけど、めちゃくちゃ怖かったって言ってましたよね?w見てるこっちも怖かったですよ!www

福元さんが初っ端から頑なにお酒を断っていた理由がお祭りの場面でわかるわけですが、彼の恐怖はお酒に飲まれてしまうこと、そして自分の居場所がなくなってしまうこと。きっとお酒で今までもたくさん失敗したんでしょうねぇ。

福元さんはあの理容院で働けてよかったよね。恐怖と闘って、求められて、信じて。きっと彼は大丈夫なんだろうな、と希望の持てるところがこの作品の救いですよね。

まぁお酒は与えないようにすれば、の話ですがwww

 

 

田中泯さん。

いやーもうまずはなんといってもビジュアルが素晴らしい(どっくん筆頭に他にイケメンたくさん出てるのに一番の年長者に対してビジュアル褒めるってさすが私)。役も良い。あの不器用が服を着て歩いている感じ。

この人だけは狂気とか超越してた気がする。

福元さんにおける理容院のように、大野さんもあのクリーニング屋さんでよかったよね。最初はおかみさんの態度に心臓がギュッとしてましたが、最後の写真撮影してるところとかほっこりしたわー。

 

 

さ。いよいよこの人、松田龍平さん。

いやほんと怪演という言葉が合う、素晴らしいサイコパスっぷり。ブラボー。万歳三唱。

最初は例の月末くんお決まりの台詞を自ら言ってくれたり、魚美味しいよって言われて素直にお刺身定食たべてくれたり、月末くんよかったね!いい子がきたよ!って思いました。ニマニマしてたもん私。(どうでもいい話ですがカワハギのお造りがめっちゃ食べたくなった。美味しいんだろうなぁ。)

しかし徐々に、おや…?と違和感が募っていく。バンドシーンとかも相まって、このあたりはBGMは鮮明なのに、すごくこびり付いてくる違和感と存在感と嫌悪感。だけど彼の純粋すぎる素直さ。なんなの!?と、引き込まれます。

彼だけは狂気に気付いていないんですよね、純粋すぎて。ほんとの狂気ってそうなんだろうなぁと有無を言わさない演技に打ちのめされました。色んなエピソードがありますけど、純粋だからこそ善悪についても表裏一体で、なんとも思っていない。

目黒さんだったっけ?息子がお世話になって…って言ってた人。あの人のことホントに覚えてなかったのかなぁ。猟奇的なサイコパスだったら絶対忘れてないよね。でも彼はたぶんそうじゃないから、ホントに忘れちゃったんだろうなぁ。

『それは友達として?それとも役所として?』なんて、聞いてしまうあたりもヤバイ。ほんと狂気が狂気でなく日常に寄り添ってる感じとかほんとヤバイ(いよいよ語彙力が無くなってきました)

宮腰の一番のヤバさは、月末が止めに来ると信じて走り出すところでしょうか。最期に心から信じられる人が出来てよかったねとか思ってしまうあたりサイコパスに飲まれておる。

うーん、この人も書ききれない!また書くかも。

 

他にも理容院おやっさんとか、クリーニング屋のおかみさんとか、月末父とか、訳書の後輩とか、あれ?名前なんだっけ、ドラム叩いてた同級生とか、語り足りないけどまずはここまで。

おー今までで1番長いブログになったかも。

 

 

恐怖の対象であるモノもまた別の恐怖と闘っている。

恐怖から逃れる方法は人の数だけあって、恐怖心を生かすも殺すもその人次第。

 

なんでしょう。今の私が感じたことって、また時期を変えて観たら変わるんでしょうね。

そういう作品でした、羊の木。

なんだかやっぱり消化不良なのでまた日を改めて観ようと思います!

しいて言うなら前後編とかでもっとそれぞれのお芝居みたかったなー!